空想科学祭FINAL感想掲示板

空想科学祭FINALにようこそ!
今回は、作者側から事前に「感想耐性レベル」を伺っています。
詳しくは、企画サイトの作品リストをご覧ください。
なお、スレッドは実行委員会で立てますので、ご了解ください。


★読者さんにお願い★
・耐性レベルより辛口の感想をつけないように配慮する。
・誹謗中傷にあたるような書き込みをしない。
・他人の書き込みに、いちゃもんをつけない。

★作者さんにお願い★
・作者からのレスは、企画終了後に纏めておこなうこと。
・自分の示した耐性レベルより
  辛口ではないかと思われる感想が書き込まれても逆上しない。


[65] 雪火野 /俊衛門 【レベル5】 Name:空想科学祭実行委員会 HOME 2012/08/05(日) 00:15 [ 返信 ]
調は白兵になった。操は原野に消えた――音に触れ、歌を味わう人々の中に、唐突に生み出された歌うことのない旧人類の兄妹。やがて妹は都市から投げ出され、追い縋る兄は旧時代の機械を討つべく原野に降り立つ。楽理奏でる州都から、すべての孤立せし"雪火野"へ。生誕の場所、血のルーツ――自らの原点たるその地で、かつての少年は銃剣を手にする。

http://ncode.syosetu.com/n7867bh/



[213] RE:雪火野 /俊衛門 【レベル5】 Name:尚文産商堂 2012/08/21(火) 19:58
人生とは、交響曲であるという言葉が、ぴったりに思える作品でした。
淡々と進んでいく話、物語の起の部分がすこし冗長的だったとは思いましたが、それは、文字数や部数や物語の関係上仕方がないことと、読み進めるにつれて考えるようになりました。戦闘シーンは、文句無しに素晴らしいと思います。
最後と最初が結ばれているような気がして、また、初めから読み返したくなるような話に仕上がっていると思います。


[219] 感想です Name:HAL.A 2012/08/21(火) 22:27
 拝読しました。

 この作品を読めたことに、まず感謝したいです。

 素晴らしかったです。これだけ胸の震える小説に出会ってしまうと、あえて技術的にどこが巧いだのと一々述べるのも、かえって無粋に思えてしまうのですが、しかしよかった面白かっただけでは伝わらないとも思うので、まとまらないながらも、雑感を残しておきます。

 全体の構成、登場人物の描写、ドラマの作り方、構図の見せ方、挙げればきりがないですが、何よりもそれ以上に、人の在りようを正面から問う重厚なテーマが、最初から最後まで、物語の根底に力強く流れつづけていること。価値観を強制するもの、異質なもの、価値観を異にするものを排斥する集団のはたらきへの怒り、反発。世界は理不尽で、不条理で、息苦しく、それでもその中で人は、生きてゆかねばならない。

 構図の作り方、見せ方がお見事でした。対立、衝突、それから皮肉なすれ違いの構図。その中で鮮やかに描かれる、登場人物の心の動き。それぞれの人物の抱える背景。調とヨファ、リツカと千秋……
 調を思うがためのヨファの態度こそが、かえって彼を傷つけてしまう。あるいは調にとってずっとコンプレックスだったはずの旧人であるという事実が、彼を助け、敵の兵器に対抗させる。痺れました。

 戦闘シーンはじめ、映像的な描写が素晴らしかったです。小道具や兵器の描写のひとつひとつもそうですが、わけても鮮やかに目の前に浮かぶようだったのが、雪原に銀の筒の突き立つシーン。絵になる場面を描けるというのは、SF(あるいはファンタジーなどもそうですが)というジャンルを書く上では、大きな強みだと思います。

 蛇足もいいところですが、個人的に少しだけ気にかかったことを少しばかり。(いずれもこの作品の魅力を削ぐような瑕疵とは思えませんし、敢えて書くかどうか、迷ったのですが……)
 ひとつは、七海の出番が思いがけず少なかったこと。登場したときの感じからすると、彼にはもうひとつ、後半に見せ場があってもよかったのでは……という気がしました。
 もうひとつは、戦闘シーンについてです。SF的ガジェットを大いに盛り込み、かつ躍動感あふれる、魅力的なシーンばかりでした。その一方で、戦闘シーンは読んでいてかなり力が入ってしまうので、長く続くと途中で疲れてしまうところがあって。具体的には、ヨファVSマオ・シー戦と、それからクライマックスの調VS千秋戦ですが、この二つの戦闘シーンは、個人的には、もう少し絞ってあってもよかったかもしれないと感じました。(といいつつ、これはむしろ読み手としてのわたしの資質の問題ではと思いますので、聞き流していただいてけっこうです……汗)

 素晴らしい小説を読ませていただきました。ありがとうございました。的はずれな意見・指摘等ございましたら、どうかご容赦くださいますよう。


[220] 雪の荒野、ストイックな戦士達の戦いが圧巻!!! Name:鳥野 新 2012/08/21(火) 22:27
 こんなSFがタダで読めるのだったらもうお金を出して買わなくてもいいかも。出版業界には悪いが、本当にそんな不穏な考えが頭に浮かぶほどの完成度だった。冒頭の兄妹二人の旧人が、だんだん自分を取り巻く世界からはじかれていく描写から、最後の迫力ある戦闘シーンまですべてが生々しく、丹念に描写されている。文章も読んでいることを忘れるくらい読みやすい。
 いろいろ煩わしい現実に疲れ果てている私にとって、その現実から雪吹きすさぶ荒野に放り出されたようなトリップ感はたまらなかった。ある時はストイックな戦士になり、戦っているような気分で、そしてある時は登場人物達の横に立ってやり取りに加わっているような、そんな感覚さえ覚えた。
 戦闘シーンも、この作者のお得意とするところではあるが、相変わらずスピーディで、迫力満点である。しかし、何と言っても特筆すべきは戦う人々の痛いような哀しみが、かわされる刃先から伝わってくることだ。これほどのハードSFなのに、そして決してウェットな筆ではないのに行間からは、あふれるように感情がほとばしる。積み重ねられる何層ものエピソードが、最後のカタストロフィーにつながり……感動した。


以下ネタバレあり



 私の好きな戦闘シーンはヨファとマオ・シーの戦う場面(情け容赦ない女の戦いはカッコいいねえ)と、やはり最後の千秋と調の戦いだった。感情を持たないほぼ機械化された戦士の千秋、だが時折リツカに対して示されるかすかな愛情表現が見ている側としてはたまらなくいとおしくなる。そして自らの生まれに翻弄される調、傷つき誰にも心を開かない繊細な内面を持つ戦士。この大好きな二人が戦うなんて〜。(リツカ止めろよ! いや、止めてくれ何とかしてくれ。と心の中で悲鳴を上げてしまった)二人が好きであればあるほど、その戦いにくぎ付けになりその結末に涙してしまった。
 ラストも亡くなった人々を考えるとそれほどハッピーエンドではないが、静謐で、ささくれ立った調の魂にかすかな安らぎが訪れる予感にあふれた、救いを感じさせるものだった。満足……。


[246] 感想 Name:四十万 2012/08/23(木) 22:39
 この人の作品を追って行くと必然的にあるテーマが見えて来たものだ。
「差別と階層」「自己の探求」「孤立と孤独」そして「家族」。最後の家族に違和を感じる方もいるかも知れない。だが、悲劇の中で主人公たちが意識するもしないも根底で求め、帰結しようとし、又は夢見ているものがこれだった。
 しかし、このテーマは年々形骸化して来ている。そして本作では遂に脇役に至った。
 ここに展開されるのはビジュアルとスタイルも美しい戦闘だ。そこに登場する戦士は皆、戦いのために闘う。大人にならない戦闘機乗りの話や公安の電脳サイボーグたちの活躍と同じ世界で、人間が描けていない訳ではない。実に生々しく書けている、が、ここでは人間は物語のパーツであり、人間以上に生き生きとするのが戦いであると言うだけだ。
 戦闘シーンが三度の飯より好きだ、という御仁にはこれ以上の御馳走はない、と言っておく。

 さて、気になることをもう少し。
 人物の名前はここまでグローバルにする必要はあるのだろうか?これは以前から抱いていた疑問だが、本作でも甚だしい。しかも、旧人、新人の命名基準が私には分からない。これは名前から人種を想像してしまう人間には気の毒なほどのミスリードとなる。
 そして、豊富なガジェットと武器、機構など。言語に一定の基準がないと、言葉と事象がしっくりこないこともある。これは読む者を脱落させる。「分からなくても読んで行けば雰囲気で分かる」や「SF読みならこの位説明不足の方が満足する」とは作者がよく言う言い訳である。


[492] RE:雪火野 /俊衛門 【レベル5】 Name:緑乃帝國 2012/09/04(火) 11:25
 すごいものを読んだ。
 世界を綿密につくられているお話は他にもある。特に長編はそれだけの長さを紡ぐのだから、世界をしっかり作り、その世界を魅せてもらえることも読者の楽しみのうちだ。
 ただ、乱暴に言ってしまうならば、世界というのはあくまで舞台、そこに演者や物語を載せるためのツールであるといえる。世界をつくり上げ、こねくり回して、それだけで満足してしまってはいけないと思う。
 同時に、世界(舞台)とその上の物語は、密接にリンクしていて欲しいとも思う。なぜその世界なのか。この物語を描くのに、なぜその世界なのか。そういう理由や思想が、読者の側としては欲しい。
 本作品の何より素晴らしい点は、それだ。世界と物語。その両輪が、しっかりとかみ合っている。まさに一つの別世界の一部を描き出し、魅せてくれたのだ。今、そういう思いに私は囚われています。長編、この文字数にふさわしい作品でした。これが読めてよかった。

 固有名詞や造語のばらつきには、私も多少気になった点があります。ただこれは、指摘していいものかどうか。こういう部分というのは多分にセンスによるもので、指摘したところでどうしようもない場合があると思うからです。研鑽で多少は何とかなる部分ではあるとは思うんだけれども、たぶん限界がある。タイトルにもなっている「雪火野」とかはセンスあるとは思うんだけれども。こればかりはどれがどうとははっきり書けません。
 あと、落ちつかれてからでもいいので、一度ざっと機械的に校正をされる必要があるかとも思います。
 楽しませていただきました。ありがとうございました。


[656] 一気読みしちゃいましたよ。 Name:深緋 2012/09/11(火) 13:34
しっかり作られた世界観と、大きなテーマ。
そして日頃感じていた違和感が、そのまんま文字にされたらもう読むしかありません。
私がこの世界にいれば「操」と同じ事を言っているでしょう。いや、昔から似たような事思ってましたが(^^;
この難しい世界でもがく主人公、調。彼の選択は見守らねばなりません。
立場の違い故の、思想の違い。そしてつながる行動、非常に読み応えがありました。
戦闘シーンも事細かいシュミレート。
ただ、私の頭は追いつかなかった(汗)文字を追うだけになり、最終的に魔道師オーフェンに乗っ取られました、スミマセン。
何故か戦闘シーンだけ脳内変換起こしてました。たぶん、私が不慣れなせいです。
あのくらいしか、アクションあるもの読んでなくて。

動作の進行の羅列に、変化球が欲しかったな……と、贅沢を言っていいですか?
同じ語で切るのが続くと、単調になってしまってるとこがあるかなぁと。
あとは、七海さんの最期を格好良く彩って欲しかったかな?

しかーし、大変素晴らしい物を読ませて頂きました。
ありがとうございます。


[658] 追記。 Name:深緋 2012/09/11(火) 15:11
書き忘れていたのですが、漢数字の「二」の部分がカタカナの「ニ」になってる箇所が、2つ……くらいかな?
あった気がします。
フォントに差異があり気付きました。


[673] RE:雪火野 /俊衛門 【レベル5】 Name:泰然寺 寂 2012/09/12(水) 16:09
 戦闘描写をさせたら企画随一の俊衛門さん。私自身戦闘描写にてんで疎く、書こうとすら出来ない腕前なので凄いなあと毎度毎度思いながら読んでます。字数も企画上限に迫るもので、よくここまで書き上げられるなあ、と感心し通しです。
 雪原の白さを背景に繰り広げられる戦いが強烈なコントラストを生み出します。舞台装置とうまく噛み合っておりこれもまた凄いなと。
 ただなんと云いますか、以前の作品よりもテーマが少し薄らいでいるのではないか、そう漠然と感じました。主人公が成長するストーリー性はあるのですが、表立って語られるテーマが希薄であるように思えます。旧人と新人をモチーフに使い、その差異を描写することに終始しているだけ(いや、『だけ』なんていう次元じゃなくハイレベルなんですが)のような。それと20万字もの長編なのにキャラが使い捨てにされる(七海とか)のも雪火野の無常さを表しているような気がする反面もったいないな、とも。名前付いてる人もキャラが立っていても物語に深く関わってくる人物が少ないのも読者としてもったいなく感じました。
 執筆おつかれさまです。ではでは。


[837] 【ネタバレ含む】感想 Name:鄭文ういな 2012/09/22(土) 23:38
 声(情動)が色になる。はじめあたりから出ていたこの要素が、非常に魅力的でした。比喩としては、巧い小説でたまに見かけるものですが、この作品では、それをSF的要素として用いている。それが新しく感じ、読んでいて楽しかったです。
 さらに好きだったのが、旧人と新人の溝を抱える、全ての登場人物。自分が読む限り、旧人も新人も、人間として酷似している印象でした。差異よりも一致するところのほうが多い。しかし人々は、互いに異なるところにしか目を向けない。その描写が生々しく現実味があり、世界観を深く覗くことができて、好きだったんです。

 戦闘シーンもスピード感があって良いですね。特に、ヨファとマオ・シーの戦闘が一番好きです。ラストの調VS千秋も読み応えがありました。しかしこの点について、細かな指摘を。
 助詞を省くことでスピード感を出す叙述が、よく見受けられました(「太刀走る」「銃剣突き出す」など)。これ自体は魅力的で良かったのですが、短い間隔でこれが続くと、少々雰囲気を壊すものが出てきていた気がします。先ほど引用した部分が特にそうです。隣り合った段落同士でこれをすると、スピード感よりも少々悪い意味での滑稽さが出ていたような。あくまでも一意見ですが。
 そういっても読みにくいものではありません。むしろすらすらと読ませる巧い戦闘描写です。面白かった!

 執筆おつかれさまでした。
 


[863] 色見本ほし〜 ネタばれアリ注意!!!!【レベル5】 Name:招夏 2012/09/24(月) 15:00
情動によって声(歌音)に色や形や味がつく……なんちゅー面白い設定。と同時に、何という生きにくい新人の生活であろうかと同情。もっともそれが普通になったら気にならなくなるのかな? しっぽを付けられて暮らしているような感じですかね〜。あからさまに感情を見られてしまう。それよりももっとひどいか。常に気を使って心を制御していかないと社会生活が保てないなんて、そりゃ無理だわ〜と…(きっとこれがまんま、旧人の考えなんでしょうね(^_^;))

歌音の色見本が欲しいと思いました。恐らく調たちはそれを教本なんかで勉強したんだと思いますが、それが欲しいと思いました。青は憂い? 赤は攻撃? 黄色は嘲り? 大まかなところは大体掴めたんですが、今一つ色の変化が読みとれていなかった気がしました。旧人なものでね…(-_-) 是非教本を…ぷりーず。

「黄海に消ゆ」「燕と夜叉」「ルカに捧げよ」に続いて今回、私は始めから主人公の死を覚悟して読み始めたのですが、今回は……。それが妙に新鮮で、ピンホールのような小さな穴から光が差し込んだようで救われた気がしました。

人種の違いや能力の違い、あるいは富んでいるか否か、色んな人の立ち場があって、色んな考え方がある、当然、差別や偏見もある。それに反発する者もあれば、融和しようとする者もある。みんな違ってみんないい…そんな風に考えられれば良いのだけど、現実はそうはいかない。その辺の迷路のような人の心の闇や葛藤を描くのが本当に上手な作者さんだと思います。

あと、アクション描写はいつもながら秀逸だったのですが、いつもより少し荒っぽい気が少ししました。一個前のういなさんが書かれている指摘が当たっているような気がします。

重厚な作品、今年も堪能させていただきました。


[875] 感想です。【ネタバレ】 Name:化野 夕 2012/09/25(火) 21:55
拝読いたしました。

相変わらずの、重厚な物語。堪能いたしました。

以下、ネタバレ。


感情を「歌音」を媒体として共有し、一つの共同体を作りなす。
異なるものを徹底的に排除あるいは教育によって隷属させた、統率された世界。
考えただけで……吐きそうです。(失礼)
だからといって、人の意見を聞く気もない倉木さんとか、拒絶する主人公とか。
「男は、これだから……」と、嘆息してしまったり。(失礼)
どちらかしか、選べないのか。
共存は成り立たないのか。
読み進めながら、ずっと思っていました。
結果は……本編を読み終えた人なら、お解りのとおり。
旧人と新人との間にある壁は、消えないでしょう。でも、それが戦争にまで発展するのは極端から極端に走ったもの。
完全否定ばかりじゃない。解りあえることもある。そんな簡単な事を思い出させていただきました。

とても濃厚かつ重厚なSF作品、ご馳走様でした。


[943] 【ネタバレ有り】感想です Name:桐谷瑞香 2012/09/29(土) 00:11
心の奥底に響くような重いテーマ、雰囲気。その中で時にもがき、後ろに戻りつつも、最終的には前に少しずつ進み始めた主人公。感動や素敵など、そういう単純な言葉では表せないほどのお話でした。じっくりと、また考えさせられながら拝読させていただきました。

淡々とした始まりや雰囲気の中で、突出している操という少女の存在が気になりつつも、現代での戦闘シーンへ。奥深い世界観と非常に巧みな戦闘描写により一気にその世界に入り込みました。またテンポよく、的確な描写であったため、気が付けばその場面を読み終えてしまいました。いくつも戦闘シーンはありましたが、どれもが雰囲気や相手が違っていたため、一戦、一戦、固唾を呑みつつ読み進めていました。
ヨファとマオ・シーも好きですが、調と千秋のシーンは圧巻であり、息も吐く暇もありませんでした。お互いがリツカに対して思っているからこそ起きた戦闘に、どことなく切なさも感じてしまいました。ただ、少し長すぎたかという印象も受けました。ただ単に私が戦闘シーンを読み慣れていないからかもしれませんが……。

旧人と新人間での摩擦がある世の中において、その摩擦を直に感じている調。
どちらかといえば主人公である旧人よりの意見になりそうですが、ヨファの存在のおかげで新人からの意見も述べられており、ただ単に一方的な主張でないのが良かったと思います。
歌音により、他人に対して気を使いながら生きる新人――それはまるで日本人の国民性のようであり、それは果たして幸せなことなのかと思いました。だからか、ヨファが平手打ちをしてからのシーンはすっきりしつつも、心が打たれるものがありました。
調がリツカに対して手を差し伸べたシーンを読んで、彼は様々な事件に遭遇し、人と出会い、真実を知った結果、前に進み始めることができた。だからこそ、これから新たな道を踏み出す彼女に対しても、ミハルに頼まれただけでなく、自然と出てしまった言葉なのかもしれないと、つい思ってしまいました。

始まりが終わり、そしてまた始めるというラストを垣間見て、生き残った人々には是非とも頑張ってほしいと思いました。
とても重厚な小説をありがとうございました。


[1014] 感想です【ネタバレあり】 Name:神沢翠 HOME 2012/09/30(日) 23:53
 何よりも雪火野という表題になっている言葉は、失われていく人々の姿に重なり、秀逸だったと思います。
 核となっている歌音(チャンク)のアイディアは、共感覚をSF的に料理する方法としては非常に斬新だったのでは。描写も巧みで、歌音の幻想的な「手触り」や「色彩」を堪能できました。ただのガジェットには終わらず、世界観、社会像、それぞれの人物の生き方にまで根を下ろしていることに「これぞハードSF!」という感慨を覚えました。
 必要な伏線が丁寧に張られ、うまく回収されていく手際の良さには、拍手を送りたい気分で読みました。終盤に向かうにつれ、加速し、止められなくなっていく展開は、哀しくも、迫力があり、引きこまれました。特に佳境である調と千秋の戦うシーン。戦う彼らの姿は美しい。リツカと操の対比も涙を誘われました。
 操に結局のところ再会はできず、リツカも千秋や雪火野の生活を捨てなければならなかった、という点に、切実さ、厳しさを感じました。これだけの苦闘を経て、残された希望はとても少なく、受け入れなければならないことは数多く、しかし、それこそこの物語のテーマなのかな、と。


[1027] 【ネタバレ注意】根底にあるもの Name:鹿目 咲 2012/10/01(月) 16:32
 まずは祭りの期限に間に合わず申し訳なく……と、それはさておき、大作でした。
 書きたいものを詰め込んだのだと、感じました。新人と旧人の対立、声を通して相手に気持ちがストレートに伝わってしまう歌音、大切な妹との別れから、自分の出自を知り自己の存在理由に苛み、そして選択を迫られる。戦闘シーンは圧巻でした。
 ただ、何か、物足りない。薄れてしまっている。
 ブレているわけでも、主軸自体がないわけでもないのですが、期待するほどの衝動がなかった……戦闘シーンも然りですが、どこか、上滑りを起こしているような感じがしました。
 テーマは重いです。もちろん、必要なことは書けているのだと思います。しっかりと、響くものはある。ただ、響きすぎて涙が止まらないほどではない、とでも言いましょうか。
 戦場でしか生きる意味を見いだせないわけではないと思うのですよ、調も、作者も。多分、今作の文字の比重、戦闘に割きすぎているのが原因ではないかと。20万字という制限がありますから、その中で一杯一杯に広げた結果、そうなってしまったというのはよく分かるのですが、私はもっと、人間ドラマを見たかったですね。
 調の中で、操の存在とリツカの存在がどう違うのか。ヨファへ向けた調の気持ちは。生きる道を最終的に選ぶまでの葛藤、それまで関わってきた人たちに対する、調の気持ちは。調の中では何となく区切りが付いたようなのですが、もっと読むのが辛くなるくらい生々しい人間描写に徹してもらいたかったです。特に、このテーマなら。
 戦闘シーンは力を入れているだけ合って、さすがです。ただ、ちょっと今までと書き方が変わったのか、短いセンテンスや句点の連続に、逆に時間が止まることもありました。それでも、書き慣れているだけあって、雪の中をズボズボとよく走り回りましたね。頭の中で雪のきしむ音がよく聞こえました。作中では殆ど音がしなかったのが少し残念でしたが。
 と、こうして書いているのは、私よりずっと筆力がある、これからもっといいのが書けるに違いないと言う期待からだというのを書き添えねばなりません。
 調が言われたセリフ、調が言ったセリフ、どれも、どこかで鬱屈としがちな自分たちの、後ろ向きな気持ちを代弁しているようでした。その代弁に、期待してしまったのかも知れません。もっと抉ってもいいと。
 最後に、一貫していままでの企画参加作品の根底に流れる一つの世界観、特に「阿宮」の由縁をもしかしたら聞けるのじゃないかと思ったのですが、出てこなかったのが、個人的に残念でした。いずれ明かされることを楽しみに待っています。


[1057] あさってな深読み【ネタバレ】 Name:イトマキエイ 2012/10/05(金) 17:37
 戦いはマクロ視点においては二色に分けられます。しかし、その色を仔細に見るならば、様々な色が混ざり合い、互の中に相反する色さえ含まれます。
 この世界の新人と旧人の戦いも、構成する人々ごとの複雑な立ち位置が見て取れました。
 中でも旧人の立場は多彩で、両極において互が敵味方の憎しみの対象にすらなっています。その最右翼が倉木であり、対極の代表がキース・レグラントなのでしょう。同族ながら相手の存在が己の生の障害と徹底排除を求める。この両極との間に、距離をそれぞれに取るカミラ、七海、ミハルがいます。彼らの立場は、主人公の調が己のあるべき場所を求めて彷徨った道筋でした。戦闘によって調は目指す場所を掴み取ろうとしますが、その毎に生ずる新たな矛盾がそれを許しません。

 第一の戦闘場面では、新人との能力の差を見せられ苛立つ調がいます。そこをカミラに己が新人に合わせて生きることの意味を含められ、引っかかりながらも受け入れます。
 第二の戦闘で調はこれを実行し、危険の最先端を進むことによって、新人社会の己の位置を示そうとしました。大戦中、日系二世部隊が勇猛だったという逸話を思い出します。
 しかし、そこに立ちはだかったのが千秋でした。また連れて行かれた雪火野で調は旧人達に触れ、新人の中で生きることの苦しさを再確認します。具体的に上がった新人と旧人との間に生きるジレンマ。
 州兵として境界基地への配属は、この時の調の立ち位置そのものでした。けれどマオ・シーの出現は、そんな中途半端を許しません。彼女に追われ谷に落とされる。調が戦いの中で見出そうとした道の完全な喪失でした。旧人と新人の間に立つどの立場も、調は立つことができない。
 しかし今まで無かった道を予感させたのが、リツカの存在でしょう。リツカは単純に旧人と新人の間の行き来を希望します。新人によって破壊された千秋へ、癒しを与えようとする。これは復讐へ向かった倉木と、違う次元での対極を成しています。

 ミハルによって調は旧人としての根底、いや自分自身の動かざる根底を確認させられ、リツカを救うことで、今までにない新たな方向性を探しだそうとします。
しかし、そこに再度千秋が立ちはだかった。新人社会の都合により破壊され排除された千秋は、まさに操そのものではないでしょうか。新人への圧倒的な容赦のなさは、操の新人への憎悪を表してみえます。また一方で、千秋は調自身が持つ新人への抗議そのものだとも思えます。それまでの、彼の、旧人の抑圧された思いの全て。調がそれまでにない道を歩もうとするならば、縛る縄目としかならないもの。
最後の千秋との戦いは圧巻でした。調が戦ったのは自分の中にいる操、また彼自身でしたから、それが筆を尽くして語られるさまは、互の叫びが響くようでした。
この戦いによって、調自身の新たな道が示されますが、やはり複数の歩みをなると容易くいかないのが、倉木の最後なのでしょう。ここで調は臓器移植を申し出て、自らは機械の体となります。それはまさしく、彼自身が千秋の姿をとったことではないでしょうか。過去は過去として依然有り、苦しくとも忘れ去ってはいけない事実を見つめつつ、新たな入江に臨んだ調のそばには笑顔の操がいたに違いないと思います。
 以上のように物語を堪能させていただきました。新人も、とくにヨファについていろいろ思わせられましたが、長くなるので割愛させていただきます。

 気になったところをいくつか。
 やはり、戦闘に関わらない人物の書き分け、掘り下げが曖昧なような気がします。
 特に、ヨファとエリザベスの会話はどちらが言っているのか混乱することがしばしばでした。口調が似過ぎています。
 また、(倉木に対する)リツカと(調べに対する)ヨファの長広舌も辟易しました。もう少し整理されていたらと思います。

 雪火野の場所について、東北地方は平安以前は戎夷、野蛮で獣が住まう地と言われ、藤原氏が独自の文化を築いて朝廷と派を争った歴史が思い出されました。
 阿宮はよくわかりませんが、最初を現す文字である「阿」や、音階のA音を連想させられました。それぞれに始めや、基調を意味するのかなとも思ったり。「宮」は子宮かなとも、祈りを捧げる場所かなとも。

 長々といろいろ書き連ねましたが、素晴らしいお話を読ませていただき、ありがとうございました。


[1083] 作者より Name:俊衛門 2012/10/08(月) 14:56
裏話を一つ。

ここに出てくる「雪火野」は、お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが津軽、それも地吹雪が特にひどい青森県は五所川原市周辺がモデルです。今年の大雪、地吹雪が吹きすさぶ中、この中で戦闘繰り広げたら面白いだろーなーと思いつき、それから雪が降るたびに構想を練っていました。仕事柄、車での移動が多いので運転中に、もちろんちゃんと前を見て運転していましたが。
あるとき、ふと「銃剣術とかいいんじゃね?」ということで今作の方向性が決まりました。決まったのですが、そのとき丁度前の車がブレーキを踏みました。慌てて私もブレーキを踏んだら、スリップして車が半回転しました。人生で初めて走馬灯を見ました。
ということでみなさん、雪火野に遊びに来られるときはスタッドレスタイヤ着用の上、お越しください。ただし、あれは過信してはいけません。CMみたいにぴたっと止まると思ったら大間違いです。あと雪道の運転中は小説の構想を練ってはいけません、一瞬でも気を抜いたら命取りです。それと雪道でブレーキは禁物です。以上のことを守って、雪火野地吹雪体験ツアーにぜひとも来てください。
それでは。


じゃなくて次で感想レスをば。


[1087] 感想御礼 Name:俊衛門 2012/10/08(月) 15:49
>尚文産商堂さん
毎年毎年尚文さんの感想が感想版の上位を占めているこの光景が、来年から見られなくなると思うと寂しい限りです。空想科学祭の長編書きとして競い合ったあの頃が懐かしくなる日が来るのでしょうか……もうすでに懐かしい(笑)
人生とは交響曲、なるほど真理ですがわたくしはせいぜい三味線弾きが関の山。
どうもありがとうございました。

>HAL.Aさん
と、まだこのお名前でよろしいですかね、とりあえず空想科学祭仕様ってことで。
お読みいただきありがとうございました。またブログで紹介していただいて、なんだか気恥ずかしいやら妙な罪悪感を覚えたりとか。穴だらけの拙作でしたが、描写を褒めていただければ、雪の中事故った甲斐があるというものです。
七海は、まあなんというか次回作にでも使います。さすがに不憫でしたねあいつ(笑)

>鳥野新さん
そこは、日本SFの発展のためにお金出してあげてください。もしくは鳥野さんご自身が金を払わせる方になるか(笑)
戦闘シーンは力を入れ過ぎてから回った感が半端ないですが、彼らの情動を表すにはこういう形が良いかなと。千秋に感情移入していただけたなら、あいつをしゃべらせなかった意味もあったかな、なんて。
どうもありがとうございました

>四十万さん
まあほら、書く発端が「戦闘書きたい」だったので。そこは大目に見てください。最後なんで好き勝手にやらせていただきましたが、別に後悔は……後悔は……あー、アクション賞! アクション賞チクショウ!
四十万さんの挙げたテーマは、まあある程度意識はしていましたが、意識しなかったところもあり。まあ読み取り方は様々です、今回で一つテーマ「戦闘」を入れておいてください。あなたは絶対、そんなのテーマと認めないでしょうけど(笑)
5年間ありがとうございました。教わったことを今後も生かせるよう、努力してまいりたいと思います。

>緑乃帝国さん
アクション賞! 私の唯一のアイデンティティをよくも(ry

嘘です。感謝です。拙作をツイッターやらブログやら活動報告やらで取り上げていただいてありがとうございました。茶林さんの「すごいもの読んだ」は、実はかなり名誉なことだったのですね。世界観と物語の連関はこの5年間ずっと課題にしていたので、最後にそう言っていただけるとありがたいです。
まあ、固有名詞のばらつきは、気を付けます。ちょっと無秩序すぎた。
どうもありがとうございました。

>深緋さん
一気読みですか、ありがとうございます。そんな風に言われる日が来ようとは思いもしませんでした。
文体のリズムは油断していると単調になるので気を付けます。あと七海……意外とみなさん、七海のこと気にしてくださっているようで。脇役を本当に「脇」で終わらせないことが肝要であると、改めて気づかされました。
ありがとうございました。

>泰然寺 寂さん
まずは、デビューおめでとうございます。もう気軽に寺の人なんて呼べませんね。
テーマに関しては、去年までに結構語りつくした感があったので、ちょっと今年は無理やりだったなと。テーマ定まる前にビジュアルを固めたのが原因だと反省しています。キャラは、七海もしかり、もう少し脇役に光を当てるべきでした。
ともあれ、読んで下さりありがとうございます。プロともなると大変でしょうが、がんばってください。

>鄭文ういなさん
対立構造は、そのまま現実社会に当てはめたのですが、ちと露骨だったかななんて思っていました。鄭文さんの感想はそんな不安を払しょくさせてくれるものでした。ありがとうございます。
言葉づかい、気を付けます。というか国語の成績、そんなに悪くなかったんだけどな、自分……。

>招夏さん
旧人とは、すなわち我々人類のことなので、読まれる人にとってありがたくない世界が表現できればいいかなと思いました。なので目論見は成功、といったところでしょうか。色や味、歌音の対応表って別に作っていなかったんですよね。だからちょっと今後のためにまとめてみます。
思えば二回目から私の酔狂な長編に付き合って頂き、そのたびに丁寧なコメントを頂き、それも今年で最後なんですね。寂しい限りですが、またどこかの企画でお会いできる機会があれば。
ありがとうございました。

>化野 夕さん
まゆ……化野さんありがとうございました。感想欄にも書いていただいて、色々考えるきっかけとなっていただければ幸いです。重厚長大型産業、時代遅れも甚だしい作者ですが、これからもひとつよろしくお願いします、ユマーリ(ここから先は破り取られていて読めない)

>桐谷瑞香さん
お読みいただきありがとうございました。
まあ戦闘シーンは、長すぎましたかね。でもあれ、削りに削ってあの字数なんですよ。いかに戦闘シーンしか書いていなかったかってことですよね(笑)
物語をすごく丁寧に読んでいただけたみたいで、それが嬉しくもあり恥ずかしくもあり(絶対粗だらけだった)、しかし緻密な感想いただけるてことは作者として感無量です。ありがとうございました。

>神沢翠さん
歌音は共感覚、確かにそうなのですが、本物の共感覚者はもっと複雑なんだろうなと。こんな風にSFの題材なんかにしていいのかな、なんてちょっと思いました。操とは、再会できるようなエンディングにした方がいいかななんて少し思いましたが、結局こういう形にしたのは、まさしくそれこそがテーマだったわけでして、でもまあ分かりづらかったかなと反省しています。そこを注目していただけて、うれしいです。
どうもありがとうございます。

>鹿目 咲さん
まずはお詫びを。最後なのに趣味全開にしてしまって。過分な期待も寄せていただいて、その期待にそえなかったというのもなんというか申し訳なく、これから庄内平野に向かって毎日土下座したいと思います(何
まあテーマ云々よりも「銃剣術書きてーなー」が始まりだったのでお叱りはごもっともです。戦闘シーン、久しぶりだったので張り切りすぎました。まあアクションそのものをこれで最後にするつもりだったので、一つ大目に見てはもらえませんか(笑)
さて、根底のテーマというものですが、それは先の感想人様がご指摘されたこと「も」あります。ありますがここで言うほどのものじゃないので、割愛させていただきます。あと「阿宮」の意味ですが、こいつは墓場まで持っていくつもりです。負け犬ヤローの、最後の意地と思ってください(笑)
最後までありがとうございました。

>イトマキエイさん
巻末の解説を読んでいるかのような気持ちになりました。単行本の後ろにある、他作家からの解説やら推薦文。一時プロ作家の気分を味わさせていただきました。
こんなに細かく読んでいただけるなんて、作者冥利に尽きます。対立の構造とか調の立ち位置の変化とか、戦闘シーンの背景まで。全然あさってじゃない深読みに感謝です。ただまあ、確かに戦闘に関わらない人間に関してはおろそかでした。これ、一昨年も言われたんだけど進歩してない自分orz
さて、雪火野の位置が東北なのも、もちろん旧人が「獣」たる所以もありますが、何より地吹雪の、炎の中にいるような雪景色を舞台にしたいと思ったが故です。もし青森に来られる際は、雪深い二月を選ばれると地吹雪が見れます。ただし、車で来られるのは控えた方が良いです。あとせめて長靴は履いておいた方がよいかと。阿宮に関しては、イトマキエイさんの考察も良いなーとむしろそれで正解でいいんじゃね?なんて思いました。が、やはり由来は墓場まで持っていきます(笑)

最後に

五年間通して、色々な作品に出会うことが出来、いろんな作家様と交流することが出来ました。五年すべて長編で通せたのも、参加された皆様方あってこそです。こんな素晴らしい企画が今年で最後というのも寂しい限りですが、またいつか皆さんとお会いできる日を楽しみにしております。

それでは、またいつか。



  



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